チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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2005年制作のタンカ、阿弥陀仏

今から12年前。当時はベルギーに住んでタンカの制作をしていました。

ある日、オーガニックショップ"La Tsampa"に飾ってもらっていたグル・パドマサンバヴァのタンカを見てとても気に入ったというベルギー人のBさんがタンカの注文をお願いしたい、と訪ねてきました。

グル・パドマサンバヴァ

 

Bさん、小さな紙にプリントアウトした画像を差し出しながら

「注文したいタンカは少し特別なものです。こういう感じのものを描いてもらいたのですができますか?」

差し出された画像を見ると僧形の尊格が玉座に座っている絵がプリントされていて、両手で定印を結んでいることと玉座に孔雀が描かれていたことから阿弥陀如来と判断してBさんに質問。

西洋児「この見本の画像通りに描くのですか?」

Bさん 「いえ、これを参考によりよくして描いてください。」

西 「色は、、」

Bさん「色もこのプリントに近い感じでお願いします。」

西「チベットでは阿弥陀如来の体は赤い色ですが、赤くしても良いですか?」

Bさん 「それは困ります。体の色は肌色でお願いします。」

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蓮池 4

 

阿弥陀仏の極楽浄土にある池を満たす水は八つの功徳、つまり八つの優れた特性を持つとされています。

  1. 清らかで穢れがない
  2. 冷たく心地よい
  3. 甘みがあり旨い
  4. 軽い
  5. 軟らかい
  6. 良い芳香を放つ
  7. 喉を傷めない
  8. 腹などを壊すことがない

他にも渇きをいやす、感覚を豊かにする、腹を満たす、、とかいろいろと異なる説があるみたいですね。

そんなこと考えて制作してたら池の水の青が結構派手目に。

これでもかなり彩度の低い群青と藍で塗ったんだけど、蓮の葉には本当に彩度の低い色を使ってるから。

ま、色の明度(明るさ)とか鮮やかさ(彩度)は他の部分との比較でいくらでも変わるし、この先使う色が彩度の高いものになるから最終的には水面だけ浮いて見えることはない、、、と期待してます。

 



蓮池 3

グラナダに行ってきました。

今住んでいるところから車で2時間くらい。

街の建物の間からは、スペインの国立公園にも指定されているシエラネバダ山脈が見えてネパールを思い出させます。

綺麗な街並とおいしい料理で久々の休暇を満喫した後は、しばらくぶりに制作を再開。

前に混色した絵の具を溶きなおすことから始めます。

蓮の葉の彩色用に少しずつ異なる色合いの緑を数種類作ったのが、乾燥してしまってどれがどの色かわからない。

乾燥すると染料と顔料が分離してどの緑も同じに見えてしまう。

七種類もあるのに全部ほとんど同じ、、、インド人の表現を借りれば"Same same, but different"

 

仕方がないので全部溶きなおして色を確認することにします。

前回作業終了後に膠抜きをせずに置いておいたのでカチカチに固まっています。土系顔料と染料を混ぜて作った色なので、膠抜きしたら土系の顔料はともかく染料は流れてしまので仕方がないです。

溶きあがった器の置き場所は窓際にあるヒーターの上。

冬場の作業で絵の具が冷えると膠分が固まって塗りにくくなるので、それを避けるのにヒーターの上が丁度いい。

調理用のヒーターだと熱すぎてすぐに水分が蒸発してしまうし、器も熱々になってしまう。

チベットではヤギの糞を火にくべたものを利用するらしいけど、今は電気かなぁ。

葉の裏側用にもう一色作らないと。



アジャ・リンポチェ in タシデレ

少し寒いけど快晴の今日は、朝から用事があってミハスへ。

山の中腹にある白い村ミハスは、小さいながらも美しいところで観光地としても結構有名。日本からは遠いけど、日本人も結構見かけます。

画像はミハスにある役場。結構洒落た建物で、空の青さと建物の白さが良い感じです。

この辺をウロウロしているときに日本からメッセージ。

東京のチベットレストラン・タシデレからでした。

今日23日はタシデレは貸切りで、アジャ・リンポチェをお迎えしてのお食事会だということです。

アジャ・リンポチェはモンゴル人で、チベット仏教ゲルク派の創始者ジェ・ツォンカパ大師の父アジャ・リンポチェ(Arjia Rinpoche)8世の転生活仏。現在はアメリカ在住ですが、亡命前はクンブム寺の僧院長。

前回紹介した「救度仏母ターラ二十一尊の図像」冊子をご覧いただきお褒めの言葉も頂いた、ということでタシデレの奈津子さんが写真を送ってくださいました。

タシデレの店長ロサンさんも一緒。

 

最近日本でチベット関係、盛り上がってますよね。そろそろ一時帰国したいところです。今年、、、はもう少ししかないから、来年こそは必ず日本に行きたいと思っています。

そういえば明日はクリスマス・イブ。しかも土曜日。

皆さん、楽しい週末をお過ごしください!!



救度仏母多羅二十一尊の図像冊子

以前よりお伝えしていた冊子がやっと出来上がり、完成品が数冊スペインにも届きました。

まず表紙。

主尊が緑色なので表紙も緑で、、、という考えもあったのですが、最終的に選んだのは赤。

 

ベタ塗りの赤ではなく、タイトル部分の箔の金色が映える深い赤でとても気に入っています。

 

タンカと同じように金色が綺麗に輝いています。

さてページの内容ですが、救度仏母多羅二十一尊礼賛経はチベット仏教において宗派を超えて広く親しまれている経典で、多羅仏母の21体の変化身をそれぞれ礼賛する二十一首の詩で成り立っています。

今回の冊子では、各ページに一尊の多羅仏母のカラーイメージとチベット名、その多羅尊を礼賛する四偈のチベット語の詩、その読み方のカタカナ表記、そして日本語訳を併せて掲載し、お経を読む際にページを開いたままの状態で置くことができるようにリング製本としました。

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サイトリニューアル

実際に原画を見てもらう機会があった方から、
「実際の原画とサイトで見るのとでは全然違うねー。」
とか
「凄い!細かいなー!! サイトでは全然わからんな!」
と言われることが以前から度々あったのでサイト、新しくしました!

以前のサイトよりは、タンカの細かい描写も見てもらえるような画像も増えてます。 今のところパソコン用の構成になっていて、スマホ対応はまだ先になりますが宜しくお願いします。

不具合あれば連絡いただけると助かります。

以下の画像クリックでどうぞ。

〜タンカ絵師 西 洋児〜



蓮池 2 

なんだかんだと落ち着いて絵を描けない日が多いこの頃ですが、なんとか蓮池の方も葉の彩色が大体終わりました。

キャンバスがいつもより黄色味が強く濃いめの色だからか、最初思ったような色が全然作れずに随分時間を無駄にしてしまいました。

この葉の部分、元々は水彩画のような感じであっさりと薄塗りで済ませようと思って藍と藤黄だけで彩色したけども、どうも弱すぎて結局染料系のみでのあっさり彩色は中止。

ただ彩度を抑え気味にしたいので、岩絵の具はここでは使わずに土系の顔料中心。

黄土各種、緑土と藍、藤黄。

線描きが終わったときはこんな感じでした。

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21尊ターラ礼賛経冊子〜Adobeとチベット語〜 

久しぶりの21尊ターラの冊子の制作報告です。

更新が遅れてしまったので少し前の話になりますが、冊子に使っている文字の”アウトライン化”というのでつまづいていました。

この”アウトライン化”というのは、例えば上の一枚目の画像のような文字を、二枚目の画像のように縁取りしたデータにすることで、AdobeのIllustratorというソフトを使えば簡単にできる、、、はずの作業だったのに、そう簡単にはいかずに苦労しました。

自分の経験不足もあるけれども、今回の一番の原因は

❛❜Adobeのソフトではチベット文字が正しく表示されない!❛❜

ということにありました。

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タンカ教本

僕が通っていたネパールのツェリン・アートスクールでは、タンカを描く技術だけでなく、タンカ絵師として知っておくべき仏教の基本的な教えや歴史、タンカの歴史、チベット語やレンツァ文字、そして曼荼羅の制作までも学ぶことができる。

<shechen.org>

タンカはネパールのお土産屋でツーリスト相手に人気の商品の一つで、カトマンズのツーリストエリアのそこかしこにタンカの工房や教室が並ぶ。しかしそういった場所のほとんどでは本当にしっかりとした技術を身に着けることはできない。そして例え運よく良いところが見つかっても”描く技術”しか学ぶことはできないし、もともとそれが最終目的になっている。

どの工房も教室も、うちは本物とか伝統的という宣伝をしているのだけれども、実際に本物を描いているところはごく少数に思われる。そして例えどんなに綺麗なタンカを制作していたとしても技術のみではタンカの大事な部分が欠けていると言わざるを得ない。酷いところになると、どう見ても俗人の剃髪もしていないネパール人絵師にチベット仏教の僧衣を着せた画像をホームページに掲載して、自分たちの描くタンカの正統さを売り込んでいるところまである。

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タンカのぼかしに使われる色材

タンカの特徴の一つとして、美しいグラデーションで陰影を施す”ダン”とよばれる技法があります。

他の主な色が鉱物を砕いた顔料で彩色されるのに対し、この”ダン”に使うのは染料。

”ダン”にはいくつか異なる技法がありますが、今回紹介する染料を使う場合は主に二種類。

無数の”線”で描くか、同じく無数の”点”で施すやりかたです。

僕の場合は、1人目のカルマ先生には点でのダンを習いました。その後、シェチェン寺のクンチョク先生から線でのダンを学び、その際にクンチョク先生から”うちの伝統では点でのダンはやらない”と言われて、それからは”線”だけでやっています。

濃淡をコントロールしながら、細かく短かい線を無数に描き込んでグラデーションを作ります。

タンカに使うキャンバスは特殊で、絹や紙とはまた違った水の吸収の仕方をするので、日本画や水彩画のように湿らせておいた画面に色を滲ませてぼかすといった技法は使われません。

来る日も来る日もチクチク、チクチクと細かい線を描き込むことで、少しずつ作業を進めていきます。

慣れればそれほど気を使う作業ではないので工房等では弟子の仕事の一つなのですが、空のような大きな部分だと作業の進展があまり感じられず、淡い部分に濃い線や点を入れてしまうとそれまでの苦労が水の泡。その修正が大変なので初心者の方はここで挫折する人が結構います。

忍耐が必要とされる作業ですが、この辺りもタンカの制作が仏教修行なんかと結び付けられる理由の一つかもしれません。

ダンを施す部分の大きさにもよりますが、最初にうちは空だけで数日から一週間、と考えて作業にあたったほうが気持ちにゆとりを持って制作できるので良いと思います。

 

1.インディゴ

色としては、まず一番よく使われるのがインディゴ、日本でも良く知られている藍です。 チベット語では”ラム”といいます。


二枚目の画像はネパールで広く使われているインディゴ。

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