チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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基本的に自分が欲しい物

日本&香港での一か月から帰宅して、ゆっくりする間もなく急遽決まってフランス行き、、と珍しく忙しい夏です。

結構長い間筆を持っていないので、そろそろまたじっくりと腰を据えてタンカを描く日々を過ごしたい気分ですがその前に今回はAtelier NISHIからの新商品の紹介です。

実は今回の商品は日本に行く前に既に完成していたのですが、ワークショップの準備でお知らせをする時間が取れずじまいでした。

アイデア自体はもう数年前からあって、実際に制作しだしたのも随分前なんだけれども相変わらずだらだらと遅いスペインの仕事の進みっぷりのせいで大変な時間がかかってしまいました。

仕事が遅いだけならいいのだけれども、試作品完成の後でこっちに何の確認もなしに材料やデザインを勝手に変えたり、途中で面倒くさくなって仕事を投げ出されたり、、といろいろと苦労がありましたがなんとか完成しました。

完成したものはこちらです。

仏像の後ろに置く光背です。タンカに描くデザインそのままで作ってみました。

斜めから見るとこんな感じの衝立てのような感じです。

 

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日本一時帰国とワークショップ

※お陰様でワークショップは満席となりました。ありがとうございます。日本でも多くの方がタンカに興味を持っていると知ってとても嬉しいです。

以降のお申込みはキャンセル待ちとなります。

金曜日の講座はまだお席があります。タンカを習ってみたい方、また既に習っている方を励ますために(笑)西 洋児が初めて描いたタンカの画像なども用意しています。皆様のご参加を心よりお待ちしています。(2019年5月27日追記)

 

来月6月から7月にかけて1か月ほど一時帰国します。なかなか帰国することができず、4年ぶり?くらいの帰国です。

そして今回は帰国期間中にタンカの講座とワークショップを開催することになりました。以前から、次回帰国時には!と誘っていただいていた企画で、やっと、という感じです。

場所は東京曙橋のチベットレストラン タシデレにて、6月28日(金)、29日(土)、30日(日)の3日間です。

初日の28日はタシデレ特製ディナープレートを味わいながらの講座となります。講座でお話しする内容は未だにいろいろと思案・準備中なのですが、いくつか予定しているものをイベント告知のフライヤーに記載したので参考にしてください。

タンカを描き始めたのは、ネパールではまだまだインターネットも普及していなくて、デジタルカメラも持っていなかったもう20年以上前のことで、そのころの写真やネガをガサゴソと出してきて確認しながら現在スペインで準備中です。

よく聞かれる、タンカ絵師になった経緯なんかも含めていろいろと話したいと思います。

土曜日と日曜日の午後のワークショップでは、テーマを“花”として蓮の花を描きます。

花、中でも蓮の花は仏教に深く関係するモチーフで、多かれ少なかれタンカの中には必ずと言っていいほど描かれています。

今回は週末の午後の時間を使って、この蓮の花をチベット伝統のカルマ・ガディ派というタンカの一流派の描き方で描いていただきます。

実際の作業としては、こちらで用意した蓮の下絵を色紙にトレース、それに下塗りをして線を描き起こし、暈し(ぼかし)を施していただきます。作業段階で言えばこれだけなのですが、作品の良し悪しを大きく左右する線描きや、細かい線で作り出す暈しの作業はタンカを描く上で欠かせない技法なので、作品を仕上げる、と言うより、技法を身につける、といったつもりでじっくりと取り組んでいただきたいと思います。

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尊格の輝きを飾る”パタ”

タンカに描かれる尊格や覚者はその身体の周りに丸い円形、または楕円形の光背を描き身体から発せられる輝きを表現します。

円形に平坦に塗った色の上に暈しを加え、そこに身体から発せられる光線のように純金泥の極細い線を描き込むシンプルなものから、光背の外側部分に渦巻き状の模様やそこに宝珠を加えたもので更に美しく飾ることがあります。

金色の”パタ”で飾られた光背を描いた仏陀釈迦牟尼のタンカ。

 

その渦巻き状の模様は”パタ”と呼ばれ、形状が似ていることから”海獣マカラの尾の模様”と呼ばれることもあり、通常は同じようなパターンで描かれたパタをいくつか並べて尊格の光背を飾ります。

尾に金色の”パタ”を持つ海獣マカラ
(image from Himalayan Art Resourses)

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タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 2〜

前回の投稿【タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 1〜】の続きです。

今回は同じような二枚のタンカを、通常の彩色方法とツァクリのような小ぶりなタンカに用いられる薄塗り彩色方法の二種類で制作しました。

 

まずは通常のタンカの彩色同様に、各部分に暈しを施す下地になる色を平塗りしたもの。

画像では、平塗りのあとで線を描き起こした状態です。暈しは、供物の宝珠の炎と光背の薄い水色への外側からの白い暈しのみが施されています。

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タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 1〜

この夏は仕事場に蟻がかなり侵入してきて困っています。

食べ物なんかをつい放置しておいたらすぐに大量発生。

まぁ、その辺を這っているだけならいいのですが、体にも這い上がって来るわ噛みつくわでなかなか困ったものです。もちろん制作真っただ中でも遠慮なしです。

集中して細い線をスーーーっと引いていると、脚がモゾモゾと。くすぐったいと言うか痒いというか。でも引いている最中の線からは手も目も離せないので我慢して作業に集中。むやみに触れると殺してしまうので、線を一旦引き終えてから息を吹きかけて退散してもらい作業再開。

暫くすると、同じ蟻だか別のだかはわからないけれどもまたモゾモゾとやってくる。我慢して線を引き、その後退散してもらう、、、を繰り返すんだけれども、たちの悪い奴だとやたらと噛みついてくる。

制作していると足のあたりがモゾモゾするので「あ、また来たな、、」と思いながらも制作続行。そうしていると、そのうちにチクーーっと噛みついてくる。しかも一度噛んだらなかなか離さない。線引きの最中だと「痛っ!!」っとか反応もできず、その痛みに耐えながら心を無に、、、はできないまでも集中力を保ってスーーっと線を引き終える。見てみると普通よりも小さい蟻が力いっぱい噛みついてほぼ逆立ち状態。息を吹きかけた程度では離れてくれないので、筆の先でちょこっと触れて退散してもらいます。

今回の投稿は、毎日暑い中こんな感じで集中力と忍耐を試されながら制作したタンカの紹介。

 

2作ありますが、どちらもユム・チェンモを主尊にギャジンとツァンパの立像。日本語だと般若仏母に帝釈天(インドラ)と梵天(ブラフマー)、、、かな。で、どちらもほとんど同じ構図。違うのは彩色方法。

1枚は通常のタンカと同じように彩色し、もう1枚はもっと薄塗りで彩色します。ツァクリと呼ばれる儀礼用の絵札をはじめ、小さなサイズのものを彩色する時によく使われる彩色方法です。もちろん使用する絵の具はどちらも天然の岩絵の具がメインです。

まずは下描き。

 

一面四臂の女尊です。

向かって左に梵天。手には法輪。

右側には帝釈天。手には法螺貝。

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Atelier NISHI オンラインショップ 新商品追加

Atelier NISHI オンラインショップに新しい商品が追加されました。

複製画の元となるタンカのサイズが小さい等の理由で今まで複製画の販売をしていなかったタンカを含めた全20作品を、A4用紙に納まるサイズの小型の”S-size 複製画”としてお手頃な価格で販売開始いたしました。

 



"デワチェン" 複製画

去年描き上げた”デワチェン”の複製画を制作しました。

地元マラガには高性能なスキャナを持っているところがないようなので、今回もスキャニングは遥々バルセロナで。


卓球台みたいな超巨大スキャナです。

以前依頼した超拡大版のヴァジュラ・ヨギニの複製画(色校正途中のもの)が印刷見本として今も使われていました。

ヴァジュラ・ヨギニのスキャニングの投稿はこちら

今回のデワチェンの複製画は、いつも通りの原画と同じものに加えて更に二種類作ってみました。

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あと一週間。

救度仏母多羅二十一尊の図像冊子”の割引期間終了まで残り1週間となりました。

お買い求めはAtelier NISHI オンラインショップまたは東京曙橋のチベットレストラン&カフェ・タシデレでお願いします。



インスタグラム

インスタグラムで最近の仕事に加えて昔の仕事の画像も公開しています。

以前に公開済みのものと重なるものもありますが、徐々に増やしていくのでよろしくお願いします。

 

https://www.instagram.com/yoji.nishi/

 



”デワ・チェン”完成

ハイシーズンとはうって変わって、人気も少なくしみじみと美しい夕暮れの南スペイン・マラガより久々の更新です。

 

Facebookの方でも書いたのですが、いつも作品撮影に使っているカメラ(古いけど作品撮影にしか使わないから実際にはほとんど使っていないのに)が急に故障してしまったり、年内に完成させるために制作に少しでも時間をまわしたかったりということで制作の途中報告ができないまま”蓮池”を描いた作品が完成してしまいました。

イメージは阿弥陀仏の浄土、チベット語だとウパメ・キ・シンカム、もしくは極楽浄土デワ・チェンです。

広大な仏国土の蓮池には赤、白、青、黄色、紅と色鮮やかで大きな蓮の花が沢山咲き、その葉も活き活きと生命力に溢れ、虫食いだとかしおれたものは一つもありません。

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