チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 2〜

前回の投稿【タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 1〜】の続きです。

今回は同じような二枚のタンカを、通常の彩色方法とツァクリのような小ぶりなタンカに用いられる薄塗り彩色方法の二種類で制作しました。

 

まずは通常のタンカの彩色同様に、各部分に暈しを施す下地になる色を平塗りしたもの。

画像では、平塗りのあとで線を描き起こした状態です。暈しは、供物の宝珠の炎と光背の薄い水色への外側からの白い暈しのみが施されています。

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”デワ・チェン”完成

ハイシーズンとはうって変わって、人気も少なくしみじみと美しい夕暮れの南スペイン・マラガより久々の更新です。

 

Facebookの方でも書いたのですが、いつも作品撮影に使っているカメラ(古いけど作品撮影にしか使わないから実際にはほとんど使っていないのに)が急に故障してしまったり、年内に完成させるために制作に少しでも時間をまわしたかったりということで制作の途中報告ができないまま”蓮池”を描いた作品が完成してしまいました。

イメージは阿弥陀仏の浄土、チベット語だとウパメ・キ・シンカム、もしくは極楽浄土デワ・チェンです。

広大な仏国土の蓮池には赤、白、青、黄色、紅と色鮮やかで大きな蓮の花が沢山咲き、その葉も活き活きと生命力に溢れ、虫食いだとかしおれたものは一つもありません。

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2005年制作のタンカ、阿弥陀仏

今から12年前。当時はベルギーに住んでタンカの制作をしていました。

ある日、オーガニックショップ"La Tsampa"に飾ってもらっていたグル・パドマサンバヴァのタンカを見てとても気に入ったというベルギー人のBさんがタンカの注文をお願いしたい、と訪ねてきました。

グル・パドマサンバヴァ

 

Bさん、小さな紙にプリントアウトした画像を差し出しながら

「注文したいタンカは少し特別なものです。こういう感じのものを描いてもらいたのですができますか?」

差し出された画像を見ると僧形の尊格が玉座に座っている絵がプリントされていて、両手で定印を結んでいることと玉座に孔雀が描かれていたことから阿弥陀如来と判断してBさんに質問。

西洋児「この見本の画像通りに描くのですか?」

Bさん 「いえ、これを参考によりよくして描いてください。」

西 「色は、、」

Bさん「色もこのプリントに近い感じでお願いします。」

西「チベットでは阿弥陀如来の体は赤い色ですが、赤くしても良いですか?」

Bさん 「それは困ります。体の色は肌色でお願いします。」

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タンカ教本

僕が通っていたネパールのツェリン・アートスクールでは、タンカを描く技術だけでなく、タンカ絵師として知っておくべき仏教の基本的な教えや歴史、タンカの歴史、チベット語やレンツァ文字、そして曼荼羅の制作までも学ぶことができる。

<shechen.org>

タンカはネパールのお土産屋でツーリスト相手に人気の商品の一つで、カトマンズのツーリストエリアのそこかしこにタンカの工房や教室が並ぶ。しかしそういった場所のほとんどでは本当にしっかりとした技術を身に着けることはできない。そして例え運よく良いところが見つかっても”描く技術”しか学ぶことはできないし、もともとそれが最終目的になっている。

どの工房も教室も、うちは本物とか伝統的という宣伝をしているのだけれども、実際に本物を描いているところはごく少数に思われる。そして例えどんなに綺麗なタンカを制作していたとしても技術のみではタンカの大事な部分が欠けていると言わざるを得ない。酷いところになると、どう見ても俗人の剃髪もしていないネパール人絵師にチベット仏教の僧衣を着せた画像をホームページに掲載して、自分たちの描くタンカの正統さを売り込んでいるところまである。

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