チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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天然の画材でタンカを
タンカは天然の鉱石や土、そして植物等から作られた様々な顔料や染料で彩色されます。

昔は現在のように水彩絵の具や、アクリル絵の具などのように化学合成された絵の具はなかったために、絵師たちが大自然の中により美しい色を求めて見つけだしたものです。

このような天然の素材による彩色技術はチベットのタンカに限ったことではなく、世界中の古典技法の中に見られるもので、日本でも”岩絵の具”として使われています。
タンカをこういった天然の素材で制作するにはその扱いに関する専門の知識と経験が必要になり、制作にもより長い時間と手間が必要になります。

更に国によっては入手困難、また入手できても高価なものであるために、現在では天然の素材でタンカを制作する絵師は少なく、その多くがポスターカラーやアクリル絵の具で制作されています。結構有名な絵師で岩絵の具を使っている絵師でさえ、塗りやすくするためにポスターカラーを混ぜて使ってたりします。


ポスターカラーやアクリル絵の具でもうまく混色することによってある程度良い結果は出せるのですが、なぜかネパールやインドで売られている多くのタンカは色が凄く派手な色のものが多いです。 

眩しい、というか目に刺さるといった感じのするものまであります。

それとは逆に落ち着いた雰囲気を出すために、すべての色のトーンを落とすように混色しているために暗い、沈んだタンカも多くみられます。


 シェチェン寺のツェリン・アートスクールで師のクンチョク先生から、タンカの良し悪しは使われる画材の価値で決まるものではない、と教わりました。より良い材料を使うという前提はありますが、描かれるものが仏の姿であるなら、例えそれがどのように安価なもので描かれていたとしても仏の有り難みに変わりはないと。


僕自身もポスターカラーやアクリル絵の具でタンカを描くことに異論はないし、自分でもそういった絵の具でタンカを制作することもあります。
サクラ水彩絵の具で描いた観音菩薩→

制作に時間のかかるタンカをポスターカラーで描くことの手軽さ、そしてタンカは移動や収納の際に巻かれることを考えるとアクリル絵の具の堅牢さは大きな魅力だと言えます。


それでも自分ではできるだけ天然の素材を使ってタンカを描きたい。

タンカというチベットの文化の継承や保存などいくつか理由は挙げられるのですが、個人的な大きな理由の一つとしてはやはり”色”です。

以前チベット人の高僧から、最近の多くのタンカは色が派手で店に並んでいると見栄えはするけれども、瞑想に使う場合には逆にその色の派手さのせいで凝視に耐えない、と聞いたことがあります。

天然の顔料、染料の色は深く落ち着きがあるけれども力強い色で、見ている自分の視線が撥ねかえされることなく逆に視線が吸い込まれるような感じで、目に刺さらない色です。

タンカが単なる鑑賞用の美術品ではなく仏教の修業に用いられる実用品である以上、正しくあることはもちろん、人を魅了することのできる”美しさ”更に修行の道具としての実用面での”使いやすさ”を兼ね添えたタンカを制作したいと思います。


日本の岩絵の具は、タンカに精通しているチベット人高僧や絵師、ブータン人のタンカ修復家も認める高品質なもので、有り難いことに日本では容易に手に入れることができます。

チベットでもラサに岩絵の具の製造販売所があるようですが、絵師が自分で又は弟子に作らせることもあります。インドでも辰砂の原石なんかは容易に手に入るので、それを絵師が砕いて使用していました。

そういったタンカの制作に使われる画材のことを伝える動画を見つけました。中国語ですが、興味のある方なら映像を見るだけでも楽しめると思います。




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