チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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”デワ・チェン”完成

ハイシーズンとはうって変わって、人気も少なくしみじみと美しい夕暮れの南スペイン・マラガより久々の更新です。

 

Facebookの方でも書いたのですが、いつも作品撮影に使っているカメラ(古いけど作品撮影にしか使わないから実際にはほとんど使っていないのに)が急に故障してしまったり、年内に完成させるために制作に少しでも時間をまわしたかったりということで制作の途中報告ができないまま”蓮池”を描いた作品が完成してしまいました。

イメージは阿弥陀仏の浄土、チベット語だとウパメ・キ・シンカム、もしくは極楽浄土デワ・チェンです。

広大な仏国土の蓮池には赤、白、青、黄色、紅と色鮮やかで大きな蓮の花が沢山咲き、その葉も活き活きと生命力に溢れ、虫食いだとかしおれたものは一つもありません。

蓮池の背後には遠く少し霞んで見える山々と、タンカのカルマ・ガディ派でよく描かれる雲を描いています。

この背景の雲や山々は藍と墨による細かい線で描かれています。タンカでは点描と線描がありますが、いずれの技法を用いた場合でもしっかりと描かれた場合は点も線もはっきりとはわからないほどになり、美しい暈しを施すことができます。

上記画像の近影。 

画面前部中央辺り、蓮群が開けて水路のようになった部分は画面中心部分を右繞する方向に向かって左側奥へと延び、その先に小さな笹船を浮かべました。

 

 

前回の投稿から随分時間が経っているので今回投稿した画像を見て気づいた方は少ないと思うのですが、実はこの完成作品は蓮池を描いた2作目で、前回までブログに投稿していたのはこれとは別の1作目の画像です。

同じ下絵を使っているのでほとんど同じ構図ですが、いくつか異なる部分があるので比べてみます。

まず一番違うのはキャンバスの色。タンカのキャンバスは絵師やその弟子が木綿に白土やチョーク粉、膠水を用いて制作するのですが、一作目のキャンバスには暗めの黄土を多めに混ぜているためかなり黄色く沈んだ色のキャンバスになっています。更に蓮の花や葉も彩度・明度共にかなり落とした色で彩色しています。

もうひとつの違いに、彩色に使用した顔料の違いがあります。特に葉の部分。

一作目には黄土や、緑土、白土といった土系の顔料を用いているのに対して、二作目はより鮮やかな鉱物顔料で彩色されています。

これが一作目の土系顔料で彩色した葉の部分。

もっと近く寄ってみると、

顔料の粒子が細かいので容易に薄く平らに塗ることができて、金泥によるごく細い線も引きやすいです。

次にこちらが鉱物顔料で彩色した二作目近影。

この部分は孔雀石を砕いた緑青(チベット語ではパン)と呼ばれる顔料で彩色した部分。顔料の粒子が粗いので土系の顔料を塗ったものに比べて随分表面が粗いのが確認できます。

また画面のあちこちに白い点が見えますが、これは砕かれた孔雀石の粉砕面に光が反射してキラキラと輝いているのが写り込んだものです。

二作品の色の違い、以下のように二つの作品を並べて同条件で撮影した画像を見ると一目瞭然。

一作目と二作目、どちらが良いとは一概に言えませんが、今回の仕事としては二作目のほうが断然良いものになったと思っています。

作品を描き終えると、道具、仕事場を綺麗にするとともに、制作時にはできなかったものも含めて彩色に使用した顔料の膠抜きをして次回作に備えます。今回はほとんどの器が異なるトーンの緑青。(因みにこの作業、普通タンカ絵師はやりません)

 

さて次はまたチベット伝統のタンカの制作に戻ります!!

 



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