チベットの仏画タンカを描くスペイン在住の日本人


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タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 2〜

前回の投稿【タンカ ”ユム・チェンモ” 〜Part 1〜】の続きです。

今回は同じような二枚のタンカを、通常の彩色方法とツァクリのような小ぶりなタンカに用いられる薄塗り彩色方法の二種類で制作しました。

 

まずは通常のタンカの彩色同様に、各部分に暈しを施す下地になる色を平塗りしたもの。

画像では、平塗りのあとで線を描き起こした状態です。暈しは、供物の宝珠の炎と光背の薄い水色への外側からの白い暈しのみが施されています。

これに対して二作目では下地となる平塗りはせずに、直接キャンバスに暈しを施しています。

こちらのタンカはこれで彩色はほぼ完成。あとは金泥で光背の線や衣の模様を描き込み、"開眼"つまり瞳を描き込んで完成となります。

開眼の作業にはチベット歴で良い日を選びますが、今回はダキニ(荼枳尼)の日が制作日程に丁度あったのでこの日を開眼の日としました。

体色には金泥を使い、首から下の部分は磨いて輝きを出しています。

 

薄塗り彩色の方にも金泥で光背の線や衣の文様を描き、瞳を描き入れて完成です。

 

さて今回の二枚のタンカ、画像をパソコンやスマホで見てどのくらいのサイズに見えるでしょうか。

まだタンカを描き始めるずっと前に、良い絵は小さな写真で見ても実物より大きく見えるものだ、、と聞いたことがあります。

構図の良いものや、強烈なインパクトを与える絵は大きく見える、ということもあるのでしょうが、細かく描き込まれている絵も写真等で見ると原画よりも大きく見えるのではないかと思います。

 

今回投稿した画像にはかなり近くで撮影したものもあり、線の太さやキャンバスの生地の目などから実際のタンカの大きさをある程度推測できた方もいるかもしれません。

通常のタンカの彩色方法を用いたタンカは15x21cm、ちょうどA5サイズです。

このサイズでの彩色、特にポスターカラーやガッシュに比べて粒子のかなり粗い岩絵の具での彩色は、塗面が粗くなってしまうとその後の暈しや線描き、金泥での文様描きにも影響してくるために注意が必要です。

比較できるように一般的な0.5mmのシャープペンシルを並べてみました。

 

次に薄塗り彩色を施したタンカ、こちらは更に小さく上記タンカの半分のサイズで縦が15cmです。

 

同じようにシャープペンシルと並べてみます。

もうこの大きさだとシャープペンシルによる細かい部分の下描きは無理です。筆入れのときも肉眼で見て描くというよりも、描く部分の拡大図を頭の中で思い描きながら半ば想像で描くといった感じです。

薄塗りでの制作の場合は塗面があまり粗くなることはなく、線の描き起こしも彩色前に直接キャンバスに施すので、塗面の平滑さではなくキャンバスの良し悪しが線にかなり影響してきます。

 

二作並べてみました。金泥の磨いた部分が輝いているのがよくわかります。

タンカのサイズが小さいと、尊格の顔のバランスが悪かったり、線が乱れていたり、また細かい部分を大幅に端折っていても、「こんなに小さいのだから、、」という気持ちが見る人にも描く人にもあるような気がします。

ミニチュア絵師ではないので小さく細かく描くことがタンカ絵師の目指すところではないのですが、今回の制作にあたっては、単に”小さいタンカ”ではなく”小さくても良いタンカ”が描けるように、そういった妥協する気持ちに揺れてしまうことのないよう心がけて制作しましたが、さて実際のタンカよりも大きく見えたでしょうか。



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